コクヨとぺんてるの争いの本質 ー 事業承継ファンドの限界

コクヨとぺんてるの争いが、NHK等でニュースになっている。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190729/k10012012751000.html

 

まず最初に断っておくと、私はファンドを否定する気はない。

それどころか、ファンドは、「大企業相手のカーブアウトの受け皿」という本分においては、

資本主義の至境のマネーマシーンだと評価している。

短期資本主義の中で、「大企業相手」に効率よく金を稼ぐなら、これ以上のビジネスはない。

 

ただ、私自身、自らファンドを運営し、また多くのファンドと共同して

中小企業の事業承継問題に取り組んできた経験上、

「中小企業の事業承継」は、ファンドには合わないと思っている。

 

合わないことを無理にやると、本ニュースのように、

ファンドにも社会にもよくない結果になることが多いと痛感している。

 

それは、ファンドが事業承継をするには、下記の構造的な矛盾があるためだ。

 

①転売前提

ファンドは、3~5年程度の短期間で「転売」しなければならない。

(それがファンドの出資者との約束だから)

 

「転売」を前提に、「事業承継」をするとは、つまりこういうことだ。

 

「事業承継します!我々ファンドが、事業承継問題を解決します!」

(ただし、3年だけ。その後は高値で転売します)

 

「事業承継対象企業が100社あれば、年に1社ずつ、3年間で3社承継します!」

(ファンドのビジネスとして、おいしく儲かる3社だけ承継します。

残りの97社は?、、、我々の利益にならないので、知りません。)

 

「投資後3年たったら年に1社ずつ、3年間で3社売ります!」

(買ったものを転売したって自由でしょ?我々の利益のために、誰でもいいから高値で買ってください。)

 

・・・さて、6年後、事業承継対象企業は減っただろうか?

・・・事業承継ファンドは、本当に事業承継をしたと言えるのか?

(それとも、「中継ぎ」しただけか?)

 

これが、「事業承継」を「ファンド」でやる構造的な問題なのだ。

 

私は、経験上、「ファンド」は別の使い道なら有用だが、

「中小企業の事業承継問題の解決策」にはならないと考えている。

 

②出資者利益の最大化

(≠社会の利益の最大化、≠社員の幸福の最大化)

ファンドが転売する時は、出資者利益の最大化の為に、

最高額を出せる相手に売る責任がある。

その時、資本主義の世界で、最高額を出せる買い手は、

多くの場合、「最大のライバル」だ。

(なぜなら、ライバルがいなくなる一番の受益者は、ライバルだからだ)

 

結果、「事業承継」をしたはずの会社は、

創業者や経営陣、社員にとって一番買われたくない「最大のライバル」に、

「統合による業界効率化」という美辞麗句のもと、「転売」される。

(これをファンドが黙ってやって、経営陣が反対したのが、今回のニュースだ)

 

しかし、ファンドにとっては、それは正しいことなのだ。

「(経営陣や社員が嫌がるライバルに売ってでも)出資者のために金を稼ぐ」

ことが絶対目的であり、使命であり、義務だから、それが正しいことなのだ。

 

ファンドにとっては、経営陣や従業員に配慮することは、

「出資者の利益に反する=運用者の誠実義務に反する」行為になってしまうから、

それは出来ないし、してはならないことなのだ。

 

③社会への悪影響

短期資本主義の論理を優先し、人心を無視して推し進めるから、

仮に資本の論理でライバルが買っても、ほとんどの統合はうまくいかない。

(両社が合意している場合ですら、企業の統合作業の成功率は2割以下だ)

 

結果、多くの場合、両社にとって失敗に終わる。

 

よい会社が失敗すれば、社会にとって、大きな損失になる。

 

でも、ファンドはそれでいい。

自分だけは儲かるから。あとは知ったことじゃない。

(まるで、どこかの金髪の大統領のようだ。。)

 

ファンドの人達が悪いわけじゃない。

ファンドには、優秀で真面目な人も多い。

だが、優秀で真面目な人ほど、この構造的矛盾に悩み、葛藤する。

 

これが、短期な私的利益を追求する宿命のファンドで、

事業承継を手掛ける矛盾であり、構造的な限界なのだ。

 

④番外編:ファンド間のキャッチボール

ちなみに、ライバルへの転売の次に、高値が付くのが「他ファンドへの転売」だ。

 

「ライバルへの転売は嫌。ファンドなら、独立性は確保できる??」

 

でも、ご注意を。この道は蟻地獄だ。

 

昭和薬品加工は4回、日本オイルポンプは3回、

「事業承継ファンド」の間で転売され続けている。

今後も、永遠に転売され続けることになるのかもしれない。。。。

 

社員や経営陣にとっては、一度ファンドに売られてしまえば、

まさに進むも地獄、引くも地獄、になる。

 

これも、根っこの問題は同じ。

ファンドは、最高値を出す相手に売るのが義務であり、それしか選択肢はない、のだ。

(それがライバルだろうと、ファンドだろうと、経営陣や社員が嫌がろうと・・・)

 

社会的利益ではなく、私的利益を最大化するのが使命のファンドにとっては、

それが正しいことになってしまうのだ。

 

⑤創業者の方へ

創業者の方とお会いすると、

「お金は二の次、従業員を大事にしてほしい」とよく言われる。

 

しかし、ファンドに売却すると、こういう結果になることが多いことは、

世にあまり知られていない。

私が知っている事例だけでも数十はある。。。ただ、報道されていないだけだ。

 

ファンドに売って、従業員は本当に大事にされるのか?

今後も10年、20年と会社で働く従業員のことを、

たった3年で転売して離れていってしまうファンドに託していいのか?

 

創業者の方には、ぜひこの点をよく理解し、後悔しない選択をして頂きたい。

 

この課題を解決するために、私は20年以上かけて、

ファンドとは似て非なるビジネスモデルを創った。

①価値ある中小企業の全てを、子や孫の未来に残す

(ビジネスとして儲かる1%だけではなく)

②転売しない(上場も目指さない)

③永久保有し、全ステイクホルダーの長期最適/長期利益を目指して経営する

(6WIN)

 

我々は、短期資本主義の中で至境のマネーマシーンを目指すのではない。

資本主義の神の手が届かない、けれど人として世の中に必要なことをやる。

それが、当機構の事業です。

 

ファンドとは、その設立目的や存在意義等から、根本的に違うのです。