「富」と「利益」の違い

先日12/15の支援者の会では、

当機構シニアアドバイザーの品川氏にもご参加いただき、

これまでとは違った構成で当機構の活動についてお伝えした。

 

 

元住友商事代表取締役の品川氏の、

豊富な経験と実績に基づく言葉には、我々も学ぶところが多かった。

オンラインで参加された支援者の方々にも、

きっと多くの気づきがあったことだろう。

(見逃した方は、後日当機構HPの支援者向けの欄に

 支援者の会の動画を掲載予定なので、ぜひご覧ください)

 

 

さて、その支援者の会の中で、澤上会長から、

「富と利益」の話があった。

 

 

きちんと理解されている方には蛇足かもしれないが、

この2つは世の中でよく混同されているので、

今回はその区別をしておきたいと思う。

 

 

富=利益ではないのだ。

 

 

では、「富」とは何か?

広辞苑の定義によれば、下記のとおりである。

 

 

㋐集積した財貨。「巨万の―」

㋑特定の経済主体に属する財の総和。経済財であり、

貨幣価値で表示される。

 

 

ここで大事なのは、「富=財の総和」という点である。

 

 

他方、「利益」とは何か?

同じく広辞苑の定義によれば、下記のとおりである。

 

 

①利すること。利得。得分。もうけ。とく。「―を得る」

②ためになること。益になること。「公共の―」

 

 

利益とは、「個々のもうけ」であると考えるとわかりやすい。

 

 

では、「富の総和」と「個々のもうけ」の違いは何か?

 

 

損益計算書における、

「売上総利益=富の総和」と「当期純利益=(株主の)もうけ」

だと考えるとわかりやすいだろう。

 

 

つまり、こういうことだ。

 

 

企業が生み出す富は、売上総利益に現れる。

売上総利益こそが「富=財の総和」だからである。

(注:富=売上ではない。

 たとえば商社が100億円で仕入れて、

 100億1円で転売したら、生まれた富は1円だ。

 100億1円ではない。)

 

 

その売上総利益から、

下記の「利益」が、

それぞれのステイクホルダーに配分される。

 

・人件費=従業員の利益

・家賃=家主の利益

・活動費(交通費、消耗品費)=取引先の利益

・設備投資費=取引先の利益

・金利=銀行(債権者)の利益

・税金=国の利益

・当期純利益=株主の利益

 

 

この各者への配分が、各者にとっての「利益」なのである。

 

 

(当機構のHPをよく読んでいる読者はもうお気づきだろうか?

 当機構の企業理念にある「6Win」で

 ステイクホルダーとして定義しているうち、

 5者はここに上げたとおりだ。)

 

 

株主重視の資本主義下では、特に当期純利益が重視される。

「株主の利益のために経営せよ」というのが、

強欲資本主義下の「コーポレートガバナンス」であり、

株主の利益=当期純利益、だからだ。

 

 

ただ、ここでよく考えてみてほしい。

株主の利益を増やす方法は、実は2つある。

 

 

1つは、売上総利益を増やし、

全ステイクホルダーの利益も増やす、

古来からのまっとうな方法だ。

 

 

これは、パイ全体である「富」を大きくすることで、

全ステイクホルダーのパイの取り分である「利益」も

大きくする方法ともいえる。

 

 

もう1つは、売上総利益は変わらずとも、

他のステイクホルダーの利益を減らし、

株主の利益にするという、

いわば他者の利益を奪い取る方法だ。

 

 

これは、パイ全体である「富」の大きさが不変でも、

株主としての権利を濫用、悪用し、

他のステイクホルダーの取り分を奪い、

株主のパイの取り分のみを大きくする方法ともいえる。

(専門用語では、これをレントシーキングという)

 

 

これは、特に近代、

金融が幅を利かせる強欲資本主義になって、

編み出された金融手法だ。

 

 

アクティビストファンドや、PEファンドなどは、

この「富を生まず、他人の利益を奪う」方法で、

天文学的な利益を得ていることも多い。

(本当に富を生んでいる素晴らしいファンドもある。が、ごく少数だ)

 

 

資本主義下では、

「株主」は会社の絶対的支配者として、

たとえば株主総会で経営陣を選ぶ権利を持っている。

 

 

その株主が、

その絶対的権限を悪用すると脅せば、

経営陣も従わざるを得ない。

 

 

そうなると、何が起こるか?

 

 

・リストラをして、従業員の取り分を奪う

・不便で小さいところに転居し、家主の取り分を奪う

・設備投資を抑え、顧客や未来の取り分を奪う

・中には企業に国を跨いだ本社移転を強要し、

 税金を抑えて、国の取り分を奪うこともある

 

 

そして、その奪った分を、すべて株主に配分する。

(そうすれば、経営陣は株主から、莫大なご褒美=賞与をもらえる)

 

 

上記の2つめの方法は、

このようにして、簡単に現実のものとなってしまうのだ。

 

 

古来、金融に携わる者には、高い倫理観と自制心が必要とされてきた。

 

 

それは、金融が限られたエリートによってなされていた時代には

確かに存在し、有効に機能していた。

 

 

だが、いまや紙幣が世の中にあふれ、金融業は肥大化した。

金融に携わる人のすべてが倫理観ある人、

というわけではない時代になってしまった。

 

 

中には、街金の方がまだかわいいと思えるくらいの、

カネカネ亡者の金融業者も散見される時代になってしまったのだ。

 

 

では、どうすればよいのか?

この流れは変えられないのか?

 

 

いや、まだ間にあう。

まだ変えられる。

 

 

鍵を握るのは、個人一人一人の行動だ。

つまり、あなたの行動なのだ。

 

 

ファンドにも、弱みはある。

「預かるお金がなければ、商売できない」ということだ。

 

 

そしてそのお金はどこから来ているか?

ファンドは個々人が持つお金を、集めて運用しているのだ。

つまり、あなたから来ているのだ。

 

 

あなたが、その悪徳金融業者の行為に、

預貯金等を通じて知らず知らずのうちに加担し、

助力してしまっているのだ。

 

 

逆に言えば、個々人がそのお金を運用するときに、

「カネカネ」、「1円でも多く、自分だけ利益を得たい」、

という「利益目的」ではなく、

「世のため、ヒトのため」、「世の中の富を増やすため」に

活動している金融業者を選んで、

そこにお金を預け替えればいいのだ。

 

 

これを我々は、「インパクトファイナンス」と呼んでいる。

個々人の資金は小さくとも、個々人は資本主義を変えられる。

そして、多くの人が動けば、その集合効果は大きな力を持つのだ。

 

 

あなたのお金が動いた分だけ、悪徳金融業者の軍資金は減る。

そして、あなたのお金が動いた分だけ、

まともな金融業者が応援を受け、より強くなる。

 

 

(いまがまともな世の中でないならば、

 おそらくその移す相手の金融業者は、

 今権勢をふるっている業者ではないだろう)

 

 

まともな金融業者が増えれば、

その分だけ資本主義が良くなり、世界は良くなる。

 

 

あなたのお金が動くことで、

「倍返し」の効果が出て、

資本主義を改善することが出来るのだ。

 

 

世の中を正しい方向に動かすこと、

子や孫の未来を守ること、

それは、あなた個人の行動にかかっていることなのだ。

 

 

個々人のお金は多額ではなくとも、

皆が預貯金に眠っているお金を少しずつ、

まともな金融業者に預ければ、

そしてそれを金融業者が正しく運用すれば、

それは可能なのだ。

 

 

それが、長期投資を行うことの、本当の効果である。

目先の個々人の利益の話ではないのだ。

 

 

このまま、逆をしていたらどうなるか?

あなたがたとえ「カネカネ」で、

数億円の個人的利益を他人から奪って得たとしても、

あなたはそれで幸せだろうか?

(その金は足の速い悪貨だ。

 早晩消えてなくなるだろうことは、歴史が証明している。)

 

 

また、ちっぽけな個人利益を亡者的に求めて、

子や孫の未来を大きく傷つけることに、

本当にそれだけの価値があるのだろうか?

 

 

結局のところ、

いま時代に問われているのは、

個々の「倫理観」であり、「自制心」であり、「行動力」なのである。

(それを、澤上龍氏は「儲けない勇気」と表現したのだと思う)

 

 

ここは、「お先に失礼」でいい。

 

 

動ける人から、動いていこう。

 

 

なお、厳密に言うと、富≧売上総利益、であり、

富=売上総利益ではない。

 

 

なぜなら「富」には、未来に生まれる富も含まれるが、

損益計算書の売上総利益には、

過去から現在までのものしか現れていないからだ。

(これは、現代会計の技術的な課題でもある)

 

 

だから、当機構の6Winの6者目には、「未来」が含まれている。

 

 

SDGsという、今はまだ掛け声だけの運動も、

この「未来の富」を損益計算書上に反映することが出来れば、

より具体的な行動につながるようになるだろう。

 

 

「子や孫の未来のために」

 

 

そんな具体的な研究も当機構では進めているということを、

ここに付言しておきたい。