シンデレラストーリーは、ホンモノか?

最近、新聞などでM&A仲介会社の広告を見ることが多くなった。

 

 

きっと、中小企業の売買を仲介することで、

とても儲かっているから、

より儲けようと広告費をふんぱつしているのだろう。

(あまりよくない。典型的なバブルの兆候だ)

 

 

その広告は、大体こんな内容だ。

「次はあなたの中小企業が、世界的な大企業に買われるかも?

 そんな、シンデレラストーリーの事例を紹介します」

 

 

だが、それは本当にシンデレラストーリーなのか?

それで、子や孫は幸せになれるのか?

長い期間で、多くのステークホルダーの目線で、

実績を検証したら、どうなのか?

・・・・

 

 

本当にシンデレラストーリーなら喜ばしいことだ。

日本の為にどんどんやればいいと思う。

 

 

だが、99%以上は、残念ながらそうはならない。

むしろ、逆効果のようだ。

そして、その逆効果を示す実例が、増えてきている。

 

 

こんな問題が起こっているので、紹介しよう。

(特に地方の創業者の方や地方銀行の方に、ぜひ知っておいて頂きたい)

 

 

先日、ある地方銀行の方とお会いした。

事業承継に関する取り組みを早くから進めている銀行で、

実績も多く上げてきており、

地方銀行の中でもかなり進んだ取り組みをしている。

そんな方から、こんなお話があった。

 

 

「M&Aは、地方創生にならないと感じている。

 むしろ逆に、地方からの雇用や経済の流出を招き、

 過疎化を促進させてしまっている。

 銀行としても、顧客の期待に応えたつもりが、

 逆に顧客の期待を裏切る結果になってしまったことも多い。

 過去の失敗を悔やんでも仕方ないが、後悔している。。。」

 

 

なぜか?

こういうことだ。

 

 

地方の中小企業が仲介業者に頼んだ時、

高いお金を出せる買い手として手を上げるのは、

都心(や中国)の、

資本力がある企業であることがほとんどだ。

(地方内でマッチングできないから、仲介会社に頼むのだ)

 

 

お金は都心部に集まっているから、

高い値段で買う先を探せば探すほど、

必然的にそうなってしまう。

 

 

だが、その都心の資本力がある企業が、

なぜ地方の中小企業を買うのだろうか?

(あなたが都心の企業の社長だったら、なぜ買うだろうか?)

 

 

地方の設備に関心がある?

古い工場に関心がある?

地方の人材に関心がある?

・・・

残念ながら、そういう有形資産に関心があるケースは、

あまりない。

 

 

都心部の資本力がある企業が欲しいのは、

その地方の中小企業が持っている

「特許」、「技術」、「製法」

「契約」、「商圏」

・・・

等の無形資産であることが、圧倒的に多いのだ。

 

 

そして、これらの無形資産は、

ひとたび買収して手に入れれば、

都心の企業に容易に持ち運びできる。

 

 

さて、都心の企業の社長として、

あなたが首尾よく地方の企業を買収し、

これらを手に入れたら、次は何をするだろうか?

(資本主義の世界におけるあなたの社長としての仕事は、

 「株主に対して最大の利益を出す」

 ことであることを忘れずに)

 

 

その地方の工場に追加投資をして、

その地方で人を雇って、

その地方のために、

その地域に根付いて、

その上で、

お金を儲けよう(社長の責任を果たそう)と考えるだろうか?

 

 

それとも、もっとラクに、

土地や人件費が日本の数分の1で済む中国やベトナムなどに、

10倍の規模の巨大な工場を新設して、

そこからグローバルに大きなビジネスをして、

大きく儲けようと考えるだろうか?

(もしくは、自社の工場の空き設備、余剰人員を活用して、

 稼働率を上げて固定費を賄おうと考えるだろうか?)

 

 

 

「どちらが人として正しいか?」

ではなく、

「どちらが儲かるか?」

という資本主義の原理の中で、

あなたは社長として行動しなければならない。

 

 

そうしたら、どちらを選ぶだろうか?

・・・ほとんどの場合、後者を選ぶしか、ないだろう。

実際、多くの企業間M&Aは、最後はこのパターンになっている。

 

 

その結果、地方の中小企業はどうなるか?

 

 

買収後、数年は大事にされるかもしれない

(ノウハウを都心部に持っていくにも、多少の時間は必要だ)

 

 

だが、5年後、10年後、30年後、

すでに無形資産を得た都心の親会社にとって、

もはや地元の会社や工場に、投資をする理由はない。

 

 

人員を増やす必要もないし、

待遇をよくする動機もない。

 

 

結果、放置された設備はどんどん古くなり、

社員も補充されず、高齢化がどんどん進む。

(それでも、用済みになった後にすぐに潰されなければ、

 まだましだと思った方がよいかもしれない)

 

 

結果、地方の中小企業は、

「承継したはずなのに」廃れていく。

そして、その中小企業を支えていた地方銀行も、ビジネスを失う。

(都心の企業の金融ビジネスは、大手銀行が抑えている)

 

 

地方としては、

地方の為によかれと思ってやったのに、

雇用を失い、経済を失うことになる。

(そしてそれを都心に譲る結果になってしまう)

 

 

それは、地方創生どころか、

逆に地方の過疎化を進めてしまう。

そして、地方から都会への富の集中をさらに加速してしまうのだ。

 

 

中小企業の創業者も、地方銀行の方も、

「こんなはずではなかった。

 一緒に頑張ってきた社員や取引先が幸せになれると思って、

 地方のためになると思って、

 M&Aで承継したのに。。。」

となってしまう。

 

 

私が多くの創業者の方にお会いしてきた中で、

売った後の企業の事は知らない、関係ない、

という創業者は、極めて例外的だ

(全くいないわけではないが・・)。

 

 

中小企業とはいえ、創業者にとってみれば

「実の娘よりも大事な存在」であることが殆どだ。

 

 

実の娘が結婚して嫁いだ後も、

娘は娘であるのと同じように、

創業者が創って苦労して育てた会社やその社員は、

たとえ手を離れたとしても生涯忘れることはない。

それほどまでに、大切なものなのだ。

 

 

それを、ただ金儲けのために群がるかのように、

ネット上で簡単なシステムを構築するだけで、

「新規事業として、M&Aの仲介事業を始めました!」

という業者が、雨後の筍のように増えている。

 

 

あたかも、古本の売買をネット上でするかのように、

企業のM&Aを手軽に仲介して、

(でも手数料はしっかり取って)早くラクに一儲けしよう、

という会社が増えている。

 

 

だが、M&Aの仲介とは、

本質的にそれほど簡単なものではない。

 

 

その大事な会社を、古本と同じようにネット上に曝してまで、

売ろうとする良い経営者は殆どいないだろう。

中小企業でも、人の想いや志は大企業と同じくらい、

(もしかするとそれ以上に)詰まっているからである。

 

 

また、古本と異なり、企業には、

従業員の雇用責任や、取引先との長い地元付き合い、

地域貢献等の責任もある。

簡単に譲ることも、譲り受けることも、本質的になじまない。

 

 

その大事な中小企業を、

あたかも古本と同様に扱って、

仲介手数料だけ稼げればいいというのは、

本質的にビジネスとしておかしいと私は思うが、

皆様はいかがだろうか?

 

 

会社を古本のように売ろうという仲介業者に頼んで買い手を探せば、

見つかる買い手は同じように、

「古本を買うように企業を買い、

 必要なページ(部分)だけ破って手中にし、

 残りはいらないから捨てる」

という買い手だ。

 

 

それでは、得をするのは、

多額の手数料を得る仲介業者と、

必要なところだけをお金で買い取って

いいところ取りする買い手だけだ。

 

 

事業承継問題を抱えて困っている中小企業も、

その関係者である地方銀行も、

自治体や地域の住民も、

そしてその地域の子や孫の未来も、

残念ながら幸せなものにはならない。

 

 

(そして、そういう正しくないビジネスでは、

 たとえ一時的にお金儲けを出来たとしても、

 長い時の試練を経る中では、

 最後には失敗するのがこの世の道理だ)

 

 

ある学者の言葉を借りると、

「資本主義には、社会性が抜けている。

 人間は、社会的存在であるというのに。」

ということだ。

 

 

たとえば、このように資本主義の原則上、

M&Aには必然的に生じてしまう問題がある。

 

 

その問題を解決するために、

当機構は「永久保有」をお約束して、事業を承継している。

転売もしないし、他社への統合もしない。

地方の企業を、地方の独立企業としたまま、

子や孫の未来にまで残していけるようにしている。

 

 

また、そうなると株主の利益を減らす必要がある?

それはその通り。

 

 

子や孫の未来のためならば、

喜んで株主としての利益を我慢しよう。

 

 

お金は大事だ。

だが、この世にはお金よりも大事にすべきものもある。

 

 

社会インフラが壊れてしまった社会の中では、

いくらお金を持っていたって大した価値にはならない。

(大地震や大洪水が発生してインフラが壊れれば、

 金持ちも、そうでない人も、一様に命の危険に迫られるのだ)

 

 

だから、当機構は、

株主利益の最大化を目的とする営利企業として

IPOを目指すのではなく、

利益よりも社会問題の解決を優先して取り組めるように、

「ソーシャルビジネス」を選択している。

 

 

なお、先述の地方銀行の方とは、そんな思いが一致し、

「地域内の中小企業を地域内で承継し、

 子や孫の未来も地域内に残そう」

という、新たな共同の取り組みが始まった。

 

 

同様の事例を、広く深く、全国に展開していきたいと思う。

 

 

年初と比べて倍増した社員たちと共に、

この夏も全力で走っていきたい。